エクセルシオvol.1  エクセルシオvol.2  プリムローズ  マリンバ  ピアノ(鷹羽弘晃)  飯靖子(オルガン)

野口龍と仲間たち(フルート)  末吉保雄個展  来往舎(入江要介&鮎沢京吾)


コンサート・プログラム

飯靖子 オルガン作品の夕べ
         〜2004年10月19日・霊南坂教会(午後7時開演)

深澤  舞 『Mon Soupir, Mes Larmes わがため息、わが涙は』 (新作初演)
末吉 保雄 Solo・No4 オルガンのための<何処に・・・> (新作通奏初演)
久木山 直 Stramika (新作初演)
佐藤公一郎 Kotohogi〔言祝ぎ〕 (新作初演)
木原 福子 Solitario ―オルガンのために― (新作初演)
三上 直子 I・N・O・R・I (新作初演)
大家 百子 「Agnus Dei」オルガンと歌(ソプラノ)または、オルガンとオーボエのために (新作初演)

― 曲目解説 ―

『Mon Soupir, Mes Larmes わがため息、わが涙は』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・深澤  舞
教会の小平を開く時の胸の高鳴りと静けさ、全ての人に開かれたその扉の重み…旅する先々で教会を訪ね歩き、
その感触を手に残しました。そして、正面の祭壇に数歩近づき、振り返ると聳え立っているパイプオルガン―――
音が「降り注ぐ」瞬間を知った時の震えを、忘れることができません。
霊南坂教会のオルガンの音に生命を吹き込む32本のストップ(音栓)、それは全て閉じられた状態で始まり、
ひとつずつ開かれていき、最後には全てのストップが開かれます。そして、4人の歌い手を32段の階段の頂上へと
導いていきます。
歌はそれぞれ異なった言語の、異なった詩をテキストとしながら、それぞれの光源を求め続けます。次第に音が
言語を超えて共鳴しあい、オルガンの導きのもと 交点―光点でひとつに重なりあう―それが今の私の祈りを音に
託した、ひとつの形でした。
それは永い永い旅の始まりであり、32段の階段の頂上で見つけたものは、鍵穴を知らぬ1本の鍵でした。
オルガンと4つの歌声に導かれてきたのは私自身であり、それがどれほど幸福な道のりであったかを、
今かみしめています。飯靖子さんと、4名の素晴らしい歌い手の皆様に、心からの感謝を捧げます。

Solo・No4 オルガンのための<何処に・・・>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・末吉 保雄
この曲の題名を<四つのモテット>としても良かった。きわめて線的で、通模倣様式に徹して、歌詞は無いが、
<何処に・・・>と問いかける数多の言葉を内包して、ふさわしいと思った。ただ私は、過去の何かの響きに近付く
つもりはないので、昔の音楽を示唆したくなかった。とはいえ、J.S.バッハや、昨秋出会ったフランス17世紀
オルガン音楽の美しさを知らなかったら、オルガンに取り組む勇気はさほどではなかったろう。それらは、背後から、
私が少しばかり近年のオルガンとは異なった響きへ向かう路の有ることを暗示する。私にとって、対位法は音を
編みだす方法で、既存の形に倣うことではなく、聞いてくださる方には馴染みの薄い、取り付きにくい曲が出来た
かも知れない。それでも、無理にでも初演者に受け取ってもらって、永く育ててもらえれば…と勝手に願っている。

Stramika・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・久木山 直
ある物が視点をかえて、積み重ねられる。積み重ねられることで、被われたものの視線は遮られる。
あるいは視線の位置が変わったように同じものが途中で切り離されたり、そこで、水平的に移動されたりする。
多層的なイメージ。複眼的な感覚。このような同時に存在する異なった時間や空間感覚ということに最近は
興味を覚えている。サウンド、音群、主題的な集合、ノイズ、など。すべて、サンプリングされたもの、そして
それをプロセッシングすることで得られる新たな断片。それらをどう配置するかによって、時間の感覚は変わる
だろう。それがどのようなものになるのか、あるいはなったのか、今日の飯靖子さんの演奏を聴衆の一人として
心より楽しみにしている。
タイトルのStramikaは、今回その特徴ある和声法に寄生したロシアの作曲家と、断片を借用した同時代を生きる
一人の作曲家の名前に依っている。この曲が何らかの記憶に残ってもらえたら嬉しい。

Kotohogi〔言祝ぎ〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐藤公一郎
Kotohogiとはその字の表すとおり、お祝いの言葉。
Congratulation! おめでとう!めでたい! 祭り、祝い事、何かにつけて言われる言葉です。
前奏の後、フーガの主題から始まり、そこから離れそうでいながらいつも主題を思い出し、パイプオルガンと
コンガが協調していきます。土俗的なコンガの響きと、全てを包み込む響きのパイプオルガン。そしてコラール
へとすすみサヌカイトが登場します。サヌカイトは讃岐地方で採取出来る非常に珍しい石の楽器です。この
何とも言えぬ澄んだ神聖な響き、天からの響きと共にこの曲を閉じていきます。
天からのお祝いの言葉は福音でもあるのでしょう。

Solitario ―オルガンのために―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木原 福子
世界中で悲しく胸の塞がる出来事が頻発する中、今、音を綴りながらも平和を祈らずにはいられません。
―Solitario オルガンのために―は今年の春に着手し、盛夏の頃に出来上がりました。冒頭に流れる
<悲しみのうた>はこの曲の一貫したモチーフで、それが受けつがれ、次第に声部を広げ、最後には
ひとつのうねりとなって爆発、炸裂して前半が終わります。後半は3声のフーガで始まり、終曲の<祈り>の
中に再び冒頭のモチーフが現れて、未来を予感しつつ・・約8分の演奏を終えます。お聞き頂くと後期
ロマン派のような印象を持たれる方もいらっしゃると思います。
現代音楽といえば斬新な表現やモダンな音色を使うことが当然ともいえますが、今回、古典的な形式で
ロマン派的な音を多用したのは、<やすらぎ>を求めた私の今の心と無関係ではないのかも知れません。
最後に作曲中からオルガニストの飯靖子さんに多くのご助言を頂き、大変お世話になりました事を心から
感謝し、御礼申し上げます。

I・N・O・R・I・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三上 直子
飯靖子さんに最初にお目にかかった時「オルガンは時間の芸術です」と仰せられた言葉がとても印象に
残りました。
私のパイプ・オルガンに対するそれまでの印象は、圧倒的な強さを備え、荘厳であり、厳粛でありつつ、
ヨーロッパの持つ長い歴史と人々の思いが交錯するかのような、大きな力を想起させ、繊細というよりは
力強いものでした。鍵盤に指が触れてから離れるまでの間に、音色が変化するなどと言うことを、考えて
みたこともなかったのです。そして霊南坂教会のオルガンの音色を聞き、それまで持っていた作品の
構想に軌道修正を施さなければならないと感じました。それは霊南坂教会の、温かく迎え入れてくれる
雰囲気にも起因するかもしれません。結果として作品は、主張するより同化してみたい・・・という様な
方向性に向かっていきました。作品の明確な構造とタイトルには、私の中の自己規制を少しでも解き放ち、
あらわにしてみた時、何かが見えてくるのではないか・・・という希望が込められています。

「Agnus Dei」オルガンと歌(ソプラノ)または、オルガンとオーボエのために・・・・・・・・・・・・・・・大家 百子
わずか4年前の世紀の変わり目には、2000年問題などと騒ぎつつも、何かとても希望に満ちた新時代を
夢想していたものですが、何と方向が違ってしまったことでしょう。人間が人間であることを忘れてしまった
かのごとく、あるいは、これが人間の哀しき性なのかもしれませんが、世界中が憎しみや闘いで充満して
しまった今、少しでも平和を・・と祈る気持ちは、宗教を超えて、多くの人が共有するものに違いありません。
「Agnus Dei」(神の子羊)は、キリスト教のミサで歌われるラテン語のテキストでありますが、その最後は
dona nobis pacem(我らに平安を授けてください)と結ばれます。今回、飯さんのお力添えをもちまして、
教会でのコンサートというたいへん貴重な機会を与えていただきました。それならば私も、私のできる
方法で祈りを捧げなければ・・と思い至り、「Agnus Dei」のテキストに沿って筆を進めました。新作は、歌
(ソプラノ)とオルガン、またはオーボエとオルガン、いずれの方法でも演奏可能に書かれていますが、
本日は浦丈彦さんのご協力を得て、後者の編成での初演となります。
飯さん、浦さんと出会えましたことに、心より感謝しております。

【演奏者】
飯靖子(ピアノ・オルガン)
桐朋学園「子どものための音楽教室」、同女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学ピアノ科を卒業、
国立♭大学大学院オルガン科修了。
ピアノを野辺地勝久、高良芳枝、オルガンを吉田実、左近和子、作曲を末吉保雄の各氏に師事。
8回にわたり渡独し、オルガンをH.ケストナー、W.シュテリヒの各氏に師事。
独奏、室内楽や宗教曲のオルガンパート、合奏伴奏、新曲初演、NHK-FM出演など幅広い分野で活躍。
最近では『讃美歌21』によるCDで編曲、オルガンを担当。
また、演奏活動と並行して長年にわたって教育にも携わり、生徒・学生たちに音楽の楽しさを伝えている。
出版の分野では礼拝学と教会音楽のための季刊誌『礼拝と音楽』(日本キリスト教出版局)の編集に
携わり、多くの文章や楽曲を寄稿。
『「讃美歌21」による礼拝用オルガン曲集』全6巻を監修。
昨年発売された『こどもさんびか改訂版』改定委員をつとめ伴奏譜を編集。
現在、日本キリスト教団霊南坂教会、及び青山学院大学オルガニスト。新島学園短期大学助教授、
洗足学園大学講師。21合唱団音楽監督。日本基督教団讃美歌委員会委員、日本オルガニスト協会会員。

【共演者】
土居裕子(ソプラノ/語り:第1曲に出演)
東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。木村宏子、仁田ちさの各氏に師事。1988年から8年間に渡り「音楽座」の主演女優
として活躍。1990年 舞台『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』で、文化庁芸術選奨文部大臣新人賞受賞。
その後も加藤健一事務所、こまつ座、新国立劇場、帝国劇場、東京芸術劇場、博品館劇場など様々な舞台で活躍。
1993年、1995年、1996年度 読売演劇大賞優秀女優賞、1998年WHO国際すこやか音楽大賞歌唱部門最優秀賞受賞。
主な舞台に『アイ・ラブ坊ちゃん』『ザ・フォーリナー』『ビギン・ザ・ビギン』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』
『ジェイプス』『花よりタンボ』『國語元年』『紙屋町さくらホテル』『ひめゆり』『タン・ビエットの唄』『ピッピ』など。
テレビ番組や、『ポカホンタス』等ディズニー映画の吹替えの他、全国的にコンサート活動も行っている。
ソロアルバムCD「ドリーム」「カノン〜風の記憶〜」を発表。現在、NHK BS2「BSすれあいホール」に出演中。

坂本貴輝(テノール:
第1曲に出演)

桐朋学園大学声楽科卒業。同大学研究科終了。二期会オペラスタジオマスタークラス修了。終了時に優秀賞を受賞。
江東区オペラ「魔笛」のタミーノをはじめ、芦ノ湖音楽祭「椿姫」のアルフレード、荒川オペラ「ジャンニ・スキッキ」の
リヌッチョなど数々のオペラに出演。また、バッハ「ヨハネ受難曲」エヴァンゲリストの好演をはじめ「カンタータ147番」、
モーツァルト「レクイエム」、シューベルト「ミサ」などの宗教曲や、ベートーヴェンの「第九」などのソリストとしても
活躍。また「二期会新進声楽家の夕べ」、東京室内歌劇場「リートアンサンブルの夕べ」や、京王サンデーコンサートなど
様々や演奏会に出演するほか、教育教材の録音にも数多く参加し、幅広い活動を行っている。第11回日仏声楽コンクール入選。
第17回ソレイユオーディション優秀賞受賞。これまでに牧川修一、大島幾雄に師事。また1995年、2000年、2004年にローマに
留学。故L.フランカルディ、G.D.ロッコの各氏に師事。現在、演奏活動の傍ら、フェリス女学院大学音楽学部副手、桐朋芸術
短期大学嘱託演奏員、東京ミュージック&メディア尚美助手、専門学校東京アナウンス学院講師、各校に勤務。二期会会員。

西谷
大(テノール:第1曲に出演)
桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部声楽科卒業。同研究科修了。
1997年よりイタリア・ミラノ音楽院で学ぶ。1999年ミラノ音楽院声楽科修了。帰国後、2度のソロリサイタルで好評を博す。
オペラでは、桐朋学園大学オペラ「子供と魔法」を始め、「フィガロの結婚」「ファルスタッフ」「ホフマン物語」
「フィデリオ」等に出演。イタリアにおいて「ランメルムーアのルチア」「愛の妙薬」等に出演。また、教育芸術社の全国
中学校・高校教材用CDに第1集より現在まで100曲以上をコロムビアにて収録。「メサイア」「第九」等の合唱ソロや、国指定の
重要文化財のホールや教会などでも演奏活動を行っている。全日本演奏家協会オーディション合格。アジアクラシック新人賞。
長江杯国際音楽コンクール第2位。日本演奏連盟会員。相模原音楽家連盟ソリスト会員。

宮原浩暢(バリトン:
第1曲に出演)

東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。静岡県学生音楽コンクール第一位及びオペラ協会会長賞を受賞。
これまでにヴェルディのオペラ「シモン・ボッカネグラ」のピエトロ役やベートーヴェン「第九」、モーツァルト「戴冠ミサ」、
ハイドン「ネルソンミサ」などの宗教曲のソリストを務める。
これまでに多田羅迪夫、佐野正一に師事。現在、同大学大学院独唱科2年に在学中。

安江佐和子(パーカッション:第4曲に出演)
桐朋学園大学卒業、同研究科修了。在学中ミュンヘン国際コンクール奨励賞受賞。
1995年よりパーカッション・マリンバソロリサイタル開催。ドイツ・バッハゾリステン、小澤征爾指揮水戸室内管弦楽団
ティンパニー奏者として国内外のツアーに出演。2001年ソリストとして新星日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団と
共演。古典から現代作品、委嘱作品の初演及びレコーディングを数多く行う。2002年9月より文化庁芸術家海外研修員として
ベルリンへ留学。現在、サイトウキネンオーケストラメンバー、桐朋学園大学非常勤講師。
浦丈彦(オーボエ:第7曲に出演)
東京芸術大学卒業。第21回民音コンクール室内楽にて第2位入賞。木曾国際音楽祭に出演。1989年、日本フィルハーモニー
交響楽団に入団。副主席オーボエ奏者(後に首席奏者)として在籍。2002年、読売日本交響楽団入団。オーボエ、イングリッシュ
ホルン奏者として、オーケストラのみならず、室内楽、放送等多方面で活動。
オーボエを大倉安幸、河野剛、梅原美男、小島葉子、室内楽を中川良平、海鋒正毅、ルイ・グレーラーの各氏に師事。

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